混沌を終わらせようとする力

半年以上前から続く混沌状態は、いまだに終息の目途さえ立ちません。季節は冬を越え盛夏に至り、ついには蝉の声が耳を刺すようにもなりました。いかがお過ごしでしょうか。

昨年末から世界中で猛威を振るうコロナウイルスの感染拡大を阻止すべく、政府の発令した緊急事態宣言に則りテレワークが推進され(たいして増えていないけれど)、不要不急の外出や県を跨ぐ移動を自粛する動きがありました。その効果もあり、5月にはいったん感染者が減少しました。ところが1か月後、事態はまた悪化し始め、今に至っても終息の目途が立たず、ワクチンも今年度中の実用は無理との発言もあります。混沌は、まだ終わっていないのです。

にもかかわらず、この混沌状態を、むりやり「終わらせようとする力」が働いているような気がします。なにやら大きな力が働き、東京を除く県を跨ぐ移動が大きく奨励されてもいるようです。

伸びきった輪ゴムから手を離すと非常な勢いで飛んで行ってしまうように、緊張状態からきゅうに手を緩めることは、おぞましい反動を生みます。今回の「終わらせようとする力」も同様です。ましてや半年間じっと外出もせず我慢に我慢を重ねていた人々にとっては、その反動力は言うまでもなく膨大な力の束として日本中を動き回ることでしょう。僕は都内在住ではありますが、一応「名所」として観光ガイドに載っている地域に在住しています。窓から町を見下ろしてみると、ここでも、あふれんばかりの人が蠢いていました。移動の奨励すらされていない地域でさえも、人が密集しています。

混沌を「終わらせようとする力」は、社会の上部・下部双方から発されているような気がします。なんだか無理しているようなその力は、圧倒的な反動力を生み、日本の都市ネットワークの網の目を高速で移動しています。その力の淵源は、いずれもかなり感情的なレベルにあるような気がします。「もう我慢できない!」の声が、日本中から聞こえてきます。もしくは、国会議事堂からも聞こえてくるようです。

感情に流されて忍耐力を失った国民は、かつてなかったような大移動を行うでしょう。ひとりひとりの無自覚が、日本のあらゆるスポットに死の種を撒き散らすことでしょう。僕はその「終わらせようとする力」が憎くて憎くて仕方ありません。